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『ラジオの魂』 小島慶子著(河出書房新社)を読んで [人]

 筆者はTBSラジオの毎週月から金曜日の13時から15時30分までの生番組のパーソナリティを担当しているフリーアナウンサー。TBSのアナウンサーであったが、2010年6月に退社し、フリーとなった。

◇ 小島慶子 キラ☆キラ のホームページ

 番組内容は、上記のホームページにより雰囲気をつかむことができるし、出演時間があわない場合にも、ポッドキャストで番組の一部を聴くことは可能。
 普段はどうでもいい話題をテーマに、様々な短い番組を織り交ぜながら、日替わりのレギュラーを相手にテーマに関するリスナーの反応メールとトークを売りにしている。なかでも、脚本があってなきがごとき、小島のフリートークが聴取者の支持を集め、番組は2009年4月に始めたが、半年で聴取率№1を獲得したという。これには伏線があり、小島が局アナ時代にやはりラジオ番組「アクセス」を担当し、この番組貢献で、1999年、放送界のアカデミー賞といわれる第36回ギャラクシー賞DJパーソナリティ部門賞を受賞している。唯の女子アナではなかったのである。現在は2児の母親でもある。

 さて、最近、小島慶子のその本領は3.11 14:46の本番中に起きた東日本大震災発生時の放送で発揮された。その模様は、TBSテレビの番組「情熱大陸」での小島慶子がテーマの映像で知った。緊急事態発生で何をしなければいけないということを、日ごろのフリートークの経験が十分に生きた放送となった様子がよくわかった。また、その翌週月曜日の放送の様子も、特別番組にしてサービスエリアである関東圏の被災状況、テレビがやっていない情報をいかに取り上げるかに苦心する様子が描かれていた。

 そしてこの本である。筆者が関心をもった点は2点である。一番目は何故、局アナを辞めてフリーとなったか。もう一つは、ラジオへの〝こだわり〟である。
 小島慶子という女子アナを知ったのは、2009年の5月ごろからの「キラ☆キラ」を聴き始めてからである。印象はこんな女子アナがTBSにいたんだ、という気持ちが強かった。そして、番組も含めて、この人も、注目されている女子アナだとわかったのは半年を過ぎたころであった。
そして、1年後退職してフリーへ。そして週刊プレイボーイに水着姿を披露するようになった。また、単発のテレビ番組にも顔をだすようになった。

 本の中で、ラジオとの関わり、女子アナとなった動機、そしてテレビ出演局アナとしての仕事、そして限界。局アナとしてのラジオとの出会い。その番組が「アクセス」。台本通りの言葉でただ番組を進行させる仕事に限界を感じていたときに、まかされたのが、「キラ☆キラ」である。自分の言葉で放送を仕切ってゆくと、局との軋轢がどうしても出るらしい。自分の個性を出して仕事、局アナの枠を飛び出して仕事をしたいという動機がフリーになった経緯が書かれていた。

 もうひとつラジオへのこだわりである。ラジオの命は、言葉と言葉以外の音がすべてである。その分、台本が重要であるかもしれない。FM番組でお気に入りはなく、ほとんど聴かないのは、台本通りの話で、面白味が全く感じられないからである。普通のAM局のほうが、面白いのは会話がそのものがうまい人たちが担当しているからだろう。名前だけ有名でラジオを担当している人は、ほとんどが棒読み。その点、すこしそれるが、このラジオ番組で異彩を放っているのが伊集院光である。かれのテレビの顔とラジオの肉声での言葉では印象が全くことなる。面白い人だ。小島もこの本のなかで伊集院光、三宅裕司の番組を中学・高校時代に聴いていて、影響を受けたことを記述している。
 テレビという媒体は、主流は映像であり、女子アナは容姿、服装まで制約を受けるらしい。もちろん発言内容も当たり障りなく、本音を封印しての受け答えに終始するのだという。見ていても面白くないのは、これが原因のようだ。そんな制約の多い媒体であるテレビより、より自由度の多いラジオが小島にとって、〝水を得た魚〟になっていったのである。そんなことが書いてあった。
 局アナ時代から積極的に他局への出演にもこだわていた小島である。ひそかにいつ出演するのか楽しみにしているのは、テレ朝の「徹子の部屋」とNHKの番組出演である。話題性からみて大いに可能性はあるとみている。
 「世の中って捨てたものじゃないよ」を信念にラジオにこだわって、自分の言葉を発信している小島慶子。
 「ラジオって捨てたものじゃないよ」とエールを贈りたい。


ラジオの魂

ラジオの魂

  • 作者: 小島 慶子
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2011/03/18
  • メディア: 単行本



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